Wired Muscle

Wired Muscle: Generating Faster Kinesthetic Reaction by Inter-personally Connecting Muscles

Jun Nishida, Shunichi Kasahara, and Kenji Suzuki
ACM SIGGRAPH 2017 Emerging Technologies

Jun Nishida、Kenji Suzuki(筑波大学)との共同プロジェクトです。

Paper (ACM Digital Library)

概要

スポーツで相手に応じて防御姿勢を取ったり、歩行リハビリで療法士から脚を蹴り出すタイミングを学んだりするように、他者の動きにすぐ身体で応じることは、対人運動や接触を伴うスポーツで重要です。しかし、視覚刺激に基づく動作の開始には約250 msかかり、即時の反応が必要な場面では間に合わないことがあります。Wired Muscleは、筋電図(EMG)の計測と電気的筋刺激(EMS)によって二人の筋活動を接続し、視覚情報に基づく過程より速い応答動作を生み出すシステムです。一人の筋活動をEMGで検出すると、もう一人の筋肉をEMSで駆動し、対応する動作を引き起こします。予備実験では、相手の動きに対する反応時間を約60 msまで短縮できました。また、先行する電気刺激で筋肉が動かされていても、自分の意思で反応したと感じる参加者がいました。複数人の運動感覚の経験を直接つなぎ、新たな運動学習の枠組みへとつなげることを目指しています。

視覚による反応より速く動く

接触を伴うスポーツやリハビリでは、相手の動きに自分の身体で応じる必要があります。相手に対して防御姿勢を取る、歩行中に脚を蹴り出すタイミングを療法士から学ぶ、といった場面です。見たものへの反応には約250 msを要します。相手の動きを捉え、状況を認識し、筋肉に指令を送るまでの時間です。身体的なやり取りの中には、この速度では遅すぎるものがあります。

Wired Muscleは二人の筋肉を直接つなぎます。それぞれが装着するbioSyncは、電極で筋電図(EMG)を計測すると同時に、電気的筋刺激(EMS)で筋肉を動かす、ウェアラブルな運動感覚の入出力装置です。Aさんの動作に伴う筋活動が閾値を超えると、Bさんの装置が対応する動作を生む筋肉を直ちに刺激します。EMGは目で捉えにくい動きの筋活動も検出するため、視覚への反応よりはるかに早く刺激を始められます。また、EMSがBさん自身の筋肉を動かすため、その動きを自分の運動感覚と触覚で感じられます。

Diagram of the bioSync device (microcontroller, amplifier, stimulator, electrode selector and discharger) wired to person A’s forearm, which releases a bar, and to person B’s forearm, which grabs it
二人の装置を有線で接続する。Aさんの装置が棒を放す筋活動を検出し、Bさんの装置が手を閉じる筋肉を刺激する。

自分の行為と感じられる、より速い反応

Wired Muscleでは、一人が棒を放してから60 ms後に、もう一人が落ちる棒をつかめました。視覚への反応よりはるかに速く、電気で引き起こされたこの動作を、自分の意思で行ったと感じる参加者もいました。

これを、視覚刺激への反応時間を測る一般的な方法である棒落下テストで実演しました。Aさんが手を開いて棒を放し、Bさんは手元を見ずにつかもうとします。Aさんの装置は手を開く伸筋の活動を検出し、Bさんの装置は手を閉じる屈筋を刺激します。放したことの検出とEMSの駆動に約10 ms、刺激された筋肉の収縮に約50 msかかりました。自発的につかむ動作の場合、視覚への反応は約250 ms、運動感覚の刺激への反応は熟練度によりますが約170 msです。

Three signal traces over time: person A’s EMG with the release, the stimulus pulses to person B and person B’s EMG with a small involuntary grab followed by a larger voluntary grab, above a timeline marking 0, 10, 60, 170 and 250 ms
反応の順序。(1)Aさんが棒を放す。(2)約10 ms後にEMSがBさんを刺激する。(3)約60 msでBさんの手が不随意に閉じる。(4)約170 msでBさん自身の随意的な把持が続く。視覚だけへの反応なら、開始は約250 ms後となる。

Bさんの筋活動を見ると、その後の過程が分かります。刺激された動きの運動感覚と触覚をきっかけに、不随意の把持から約110 ms後に、自発的な把持が始まりました。二つの動作は同じ方向に、時間を置かずに続きます。実験結果は、この空間的・時間的な一致によって、両者が一つの速い随意動作として解釈されることを示しています。コンピュータが駆動したにもかかわらず、相手への素早い反応を自分が行ったという行為主体感を伴う、「仮想的な」随意行為として知覚できるのです。

自分の身体を通じて反応を学ぶ

EMSは、記録した動作を再現して楽器演奏を教えるなど、筋肉を動かすことで動作を学ぶために使われてきました。一方、接触を伴うスポーツでは、相手の予測しにくい多様な動きに即座に反応する必要があります。一人の筋活動と、もう一人の適切な応答との対応をあらかじめ記録できれば、Wired Muscleでこうした反応動作を起こせるかもしれません。武道を学ぶ人が、適切なタイミングで成功した自分の応答を、自身の運動感覚を通して経験し、学ぶことが考えられます。現在のシステムは単一の動作を駆動しますが、複数のチャンネルを使えば、より複雑な筋活動を伴う反応に広げられる可能性があります。また、Parallel Eyesのように視界も共有することで、つながった体験の空間的な整合性を高め、学習時の認知負荷を下げられる可能性があります。

Reference

Jun Nishida, Shunichi Kasahara, and Kenji Suzuki. 2017. Wired Muscle: Generating Faster Kinesthetic Reaction by Inter-personally Connecting Muscles. In ACM SIGGRAPH 2017 Emerging Technologies (SIGGRAPH ’17). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 26, 1–2. https://doi.org/10.1145/3084822.3084844

BibTeX
@inproceedings{10.1145/3084822.3084844,
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}

Figures from the paper (Nishida et al., SIGGRAPH ’17 Emerging Technologies). © 2017 Copyright held by the owner/author(s).

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