Preemptive Action: Accelerating Human Reaction using Electrical Muscle Stimulation Without Compromising Agency
Shunichi Kasahara, Jun Nishida, and Pedro Lopes
ACM CHI 2019
本プロジェクトは、シカゴ大学の西田 惇氏、Pedro Lopes氏との共同研究です。
Paper (ACM Digital Library) · PDF
概要
先行して身体を動かす力覚提示システムで、行為主体感を完全に失わせずに反応時間を短縮する方法を提案します。こうしたシステムは、電気的筋刺激(EMS)や機械式アクチュエーターで身体を先に動かし、例えばドラム演奏などの動作を支援します。しかし、先行する支援では自分が制御していると感じにくくなります。そこで、視覚刺激から160 ms後という特定の時間帯にEMSを与えたところ、第1実験では反応時間を80 ms短縮できました。このタイミングで本人とシステムの動きが一致すると、通常より反応が速くても、自分が動作を始めたと感じられます。第2実験では、従来のEMS機器のタイミングより行為主体感が有意に高くなりました。HCIの先行研究を例に、この知見を自動化された触覚インターフェースで生かす方法を示します。
意志より早く身体を動かす
行動予測の性能と、身体を直接駆動する技術が進むと、自分の意志よりも早く正確に身体を動かせるようになります。力覚提示システムは既に、EMSや機械式アクチュエーターで身体を先行して動かし、ドラムのリズムを保ったり、歩行者を安全な方向へ導いたりしています。そのとき保つべきなのが、自分の随意行為を開始・実行・制御しているという主観的な感覚、行為主体感です。自動的に先行するシステムはこれを奪いやすく、「自分がやった」という感覚が失われます。
通常より先に身体を動かされても、自分が始めたと感じられるのか。一見、両立しないように思えます。私たちは、意図が意識に上るまで約200 msかかるという知見に着目しました。この時間内なら、装置が起こした動作でも意図と一致していれば、自分の行為として捉えられる余地があるかもしれません。問題は、装置を正確にいつ動かすかです。

EMSで指を動かしながら目標をタップする
第1実験では12名が、タッチスクリーン上の目標をできるだけ速くタップしました。目標の出現200 ms前から400 ms後までのランダムなタイミングで、前腕へのEMSで薬指を曲げました。刺激のチクチクした感覚は腕の振動モーターで隠しました。毎回のタップ後、行為主体感を1(自分では行っていない)から7(自分で行った)で評価しました。
EMSが早いほどタップは速くなり、行為主体感は下がりました。目標の出現と同時に刺激すると、タップは平均47.5 ms後と人の反応を大幅に上回る速さになりましたが、自分でタップした感覚はほぼありませんでした(行為主体感1.25)。本人の反応時間に近い約300 ms後に刺激すると、評価は最大に近づきましたが(6.81)、タップは通常より速くなりませんでした。
自分の反応より先でも「自分がやった」と感じる
EMSが指を動かしていても、本人の反応に先行する時間が約80 ms以内なら、自分で動かしたと感じられました。この範囲では行為主体感が高く保たれ、それを越えると急激に下がりました。本人の通常の反応時間を基準にすると、80 msまでの短縮では7段階の平均5.13、160 msの短縮では1.89でした。全参加者の評価に当てはめたモデルでは、先行量80 msで正規化した行為主体感が0.5となり、速さとの釣り合いが取れます。反応時間280 ms、EMS作動から接触まで40 msとすると、目標出現から160 ms後にEMSを開始することになります。

多くの参加者は、刺激されたタップを自分のものとして語りました。「EMSの感覚が少しあっても、指を自分で制御していると思えたので6や5と評価した」という声です。目標の200 ms前に刺激されたとき、「速すぎて、自分より先に動く」と気づいた参加者も、約160 ms後の刺激では「チクチクしたが、弱いフィードバックだと思った。振り返ってみても、自分も指を動かしたと思う」と話しました。
自分の反応より速く、従来方式より主体感を保つ
第2実験では新たな12名を対象に、同じタップ課題で160 msのタイミング(Preemptive Action)を三条件と比較しました。従来のEMSシステムのように目標出現と同時に刺激するBaseline、参加者が力を抜いた状態で160 ms後に刺激するEMS Only、チクチク感だけを生む偽刺激の下で自分でタップするShamです。条件の違いは参加者に知らせませんでした。
Preemptive ActionはShamでの自分のタップより有意に速く、Baselineより行為主体感が有意に高くなりました。Baselineの主体感は、力を抜いてEMSに任せた場合を上回りませんでした。主体感には本人の意図も必要でした。EMS Onlyでは同じ時点で指が動き、反応時間に差はなくても、主体感はほぼありませんでした(中央値1.0)。ただし、Preemptive Actionの主体感も、自分だけでタップする場合より低い結果でした。

刺激を自分の動きと感じられる理由
論文では、運動指令が出た後に行為の意図が意識に上りうるというLibetの知見から説明しています。平均反応時間の約80 ms前にEMSを開始すると、不随意の動作は意識的な行為の約200〜300 ms前の範囲に入り、動作の起源が曖昧になります。それでも意図は動作に先行し、画面上の結果も意図と一致するため、Wegnerの行為主体感の原則のうち、先行性と一貫性が保たれます。「どこかでEMSが指を動かしたのは分かるが、ただ動かされるのではなく、EMSと自分の動きが一体になる感じ」という参加者の言葉が、この体験を表しています。
既存システムのタイミングを調整する
このモデルから、速度と主体感をどの程度交換するかを設計できます。先行システムWired Muscleでは、ペンを放す人の筋活動をきっかけにEMSを与え、もう一人が落ちるペンをつかみました。放してから60 msで把持が完了し、通常の250 msより190 ms速くなりますが、モデルが予測する正規化主体感は0.18に留まります。ペンをつかむには200 ms以内の反応でよいので、50 msの短縮で足ります。EMSを10 ms後でなく150 ms後に開始すれば、つかめる速さを保ちながら予測主体感を0.65まで高められます。論文では、他のEMSシステムや外骨格などの機械駆動による触覚装置にも、同様の調整を提案しています。





関連論文
- Jun Nishida, Shunichi Kasahara, and Pedro Lopes. 2019. Demonstrating preemptive reaction: accelerating human reaction using electrical muscle stimulation without compromising agency. In ACM SIGGRAPH 2019 Emerging Technologies (SIGGRAPH ’19). ACM, New York, NY, USA, Article 10, 2 pages. DOI:https://doi.org/10.1145/3305367.3327997 (Laval Virtual Grand Prize)
- Jun Nishida, Shunichi Kasahara, and Kenji Suzuki. 2017. Wired muscle: generating faster kinesthetic reaction by inter-personally connecting muscles. In ACM SIGGRAPH 2017 Emerging Technologies (SIGGRAPH ’17). ACM, New York, NY, USA, Article 26, 2 pages. DOI: https://doi.org/10.1145/3084822.3084844 (project page)
Reference
Shunichi Kasahara, Jun Nishida, and Pedro Lopes. 2019. Preemptive Action: Accelerating Human Reaction using Electrical Muscle Stimulation Without Compromising Agency. In Proceedings of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems (CHI ’19). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Paper 643, 1–15. https://doi.org/10.1145/3290605.3300873
BibTeX
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author = {Kasahara, Shunichi and Nishida, Jun and Lopes, Pedro},
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booktitle = {Proceedings of the 2019 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems},
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pages = {1--15},
publisher = {Association for Computing Machinery},
address = {New York, NY, USA},
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}Figures from the paper (Kasahara et al., CHI ’19). © 2019 Copyright held by the owner/author(s). Publication rights licensed to ACM.
