Oto・Iro (Sound・Color)
Oto・Iroは、OISTのトンネルを、芸術と科学が交わる没入型の視聴覚体験へと変える作品です。沖縄各地で録音した音、合成音、投影した色彩を組み合わせています。インスタレーションであると同時に、自然音や合成音が色彩と組み合わさることで、感情や心の状態にどう影響するかを調べる実験でもあります。
色は音環境の効果を変えるか
自然の音環境はウェルビーイングを支え、都市の騒音はそれを損なうと知られています。しかし、自然環境では複数の感覚が同時に働くにもかかわらず、多くの研究は音だけを扱っています。色、特に色温度が、録音された音環境の効果をどう変えるかは、あまり分かっていません。そこで、自然音と合成音で感情への影響がどう違うか、暖色・寒色の照明がそれらとどう相互作用するかという二つの問いを調べました。
トンネルでの1か月の音と色の実験
実験の舞台は、ギャラリーとOISTへの入口を兼ねる長さ100 mのトンネルです。参加者の多くは通勤途中に通りかかる人でした。15台のスピーカーと20台のプロジェクターで、毎日8:00〜18:00に、音一条件と色一条件を組み合わせた20分間のブロックを提示しました。自然音には、夜の虫の音とリュウキュウコノハズクの声、サンゴの音と穏やかな波、雨音とカエルの声という、現地の録音を用いました。合成音は、フィルターをかけたホワイトノイズと基本波形で同じ情景を模したものです。音を流さない条件も設けました。映像は抽象的なもので、赤や黄の暖色系と、青や緑の寒色系を使いました。14通りの組み合わせを日ごとに入れ替え、各時間帯に均等に現れるようにしました。
通行者には、トンネル両端のタッチスクリーンで、快・不快(感情価)と活性度を二軸とするRussellの円環モデル上の一点に触れ、そのときの感情を回答してもらいました。25日間で3,365件の回答が集まりました。

音と色の組み合わせ
自然音が気分を高めるかどうかは、組み合わせる色によって変わりました。海の音は青い光の下で、雨とカエルの声は赤い光の下で快感情を高めた一方、合成音はいずれの色でも肯定的な効果を示しませんでした。論文では、この音と色の組み合わせを最も重要な知見と位置づけています。海の情景の平均応答は暖色より寒色で、雨の情景は寒色より暖色で、有意に強くなりました(p = 0.018、0.02)。フクロウと虫の夜の情景では、色による有意差はありませんでした。

音の種類も影響しました。両方の色を合わせると、どの条件でも回答は快で活性度の高い方向に寄り、平均の方向には差がありませんでした。ただし、合成音への回答はまとまりが弱く、平均ベクトルの長さは、自然音や無音の約半分でした(30.7ピクセルに対し56.3、56.0)。論文では、合成音が感情面のウェルビーイングに否定的な影響を与えたと解釈しています。

組み合わせが重要な理由
論文では、情景と調和する色によってその情景を認識しやすくなり、その認識が記憶や文化と結びつくと考えています。海の音と青は直接的に対応します。雨と赤の関係は、それほど明白ではありません。参加者の多くは沖縄在住で、ナトリウム灯の暖かい色を、カエルの声のような身近な夜の音と結びつけた可能性があります。また、日本文化では赤は危険と保護の両方を表すため、安心感を通じて雨の回復効果を強めたのかもしれません。自然音と同じ音量で似るように作った合成音は、「不気味の谷」に入った可能性があります。よく似ていても自然なパターンと異なる音は脳の予測誤差を生み、音源が分からない音は安心感をもたらしにくいと考えられます。
設計上は、トンネルや待合室のような殺風景な空間に自然音を加えるだけでは十分ではありません。論文では、地域の文化や人々の経験に根ざした、意味のある感覚の組み合わせが必要だと論じています。人工照明には必ず色温度があるため、音と共に働く色の役割は、さらに調べる価値があります。本研究は一つの公共空間で、主に地元の参加者を対象に、暖色と寒色のみを比較し、自己報告に基づいています。他の場所や文化でも同じ組み合わせが有効かは、今後の課題です。
Paper: The impact of visual-auditory interactions on well-being: colour and soundscapes in urban spaces (npj Acoustics, 2026)
展示
OIST Tunnel Gallery、沖縄、2025年2月3日〜3月6日
Project by OIST Sonic Lab
Supported by COI-NEXT, The Global Bioconvergence Center of Innovation


Reference
Izumi Fukunaga, Shunichi Kasahara, Nicholas Luscombe, Santa Naruse, and Paul Bavister. 2026. The impact of visual-auditory interactions on well-being: colour and soundscapes in urban spaces. npj Acoustics 2, 1, Article 12 (April 2026). https://doi.org/10.1038/s44384-026-00048-7
BibTeX
@article{10.1038/s44384-026-00048-7,
author = {Fukunaga, Izumi and Kasahara, Shunichi and Luscombe, Nicholas and Naruse, Santa and Bavister, Paul},
title = {The impact of visual-auditory interactions on well-being: colour and soundscapes in urban spaces},
journal = {npj Acoustics},
volume = {2},
number = {1},
year = {2026},
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publisher = {Springer Science and Business Media LLC},
doi = {10.1038/s44384-026-00048-7}
}Figures from the paper (Fukunaga et al., npj Acoustics 2026), licensed under CC BY 4.0.
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